地域水系基盤研究会

研究課題の概要

早稲田大学景観・デザイン研究室では、現在、JSPS 科学研究費 基盤研究(B)「地域水系基盤概念に基づいた水インフラとともにある暮らしの再生デザイン手法の開発」(2022~2024年度、研究代表者:佐々木葉)による研究活動(略称:地域水系基盤研究会)を展開しています。

研究目的・内容

本研究課題では、身近な空間的地域資源の活用と地域社会の自治力向上を同時にめざすまちづくりのために、水に関わるインフラを対象とした空間・社会統合型デザイン技術の構築を目指します。

そのため地域社会に密着した小河川・水路・湿地・湧水などに着目して、利用・管理と施設の状態を一体的にとらえた「地域水系基盤(Community-based Water Infrastructure)」というインフラの新たな概念を提示し、①その特性と歴史的変化分析の結果を可視化した地域水系基盤特性図からデザインの対象とすべき地域のツボを抽出する手法、②これを活かした水とともにある暮らしの再生のための動的デザイン技術の体系化と実装に取り組みます。

土木分野の景観研究者によるフィールドでの実践的研究蓄積を踏まえ、「インフラという規模の大きな対象が有する複合的地域課題を利用主体の立場から解決するデザイン学の貢献」として、調査・実践・検証のサイクルによる実効性が高いデザイン手法を開発することで、様々な地域再生に展開していきたいと考えています。

研究メンバー

研究代表者佐々木 葉早稲田大学
研究分担者福井 恒明法政大学
星野 裕司熊本大学
二井 昭佳国士館大学
山口 敬太京都大学
福島 秀哉九州大学
中村 晋一郎名古屋大学
林 倫子関西大学
連携研究者谷川 陸京都大学
小澤 広直長岡工業高等専門学校

学会発表

土木学会土木計画学研究発表会における企画セッション

土木学会土木計画学研究発表会において、2017年度から本研究課題に関する企画セッションを継続的に実施しています。

セッション開催記録

2023年11月第68回土木計画学研究発表会(秋大会)地域水系基盤の計画・デザインと川まちづくり
2022年11月第66回土木計画学研究発表会(秋大会)地域水系基盤の計画・デザインと川まちづくり
2021年11月第64回土木計画学研究発表会(秋大会)地域水系基盤の計画・デザインと川まちづくり
2020年11月第62回土木計画学研究発表会(秋大会)地域水系基盤の計画・デザインと川まちづくり
2019年11月第60回土木計画学研究発表会(秋大会)「水」を活かした地域再生の実践と手法から学ぶ
2018年6月第57回土木計画学研究発表会(春大会)地域の水系・水循環のマネジメントとまちづくり
2017年6月第55回土木計画学研究発表会(春大会)「水」に着目した地域計画とまちづくり

主要関連論文

新潟県福島潟・古太田川

地域水系基盤のデザインに向けた水利用施設の実態把握 -新潟県新発田市古太田川のカワドに着目して-
結城 拓海, 麥 廣之, 塩山 祈, 長澤 歩, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.68, 論文番号23-13, 2023.
Designing the Value of Water Infrastructure for Sustainable Regional Inheritance:
A Case Study in the Lowland Wetlands of Niigata, Japan
Yoh SASAKI|Proceedings of 2023 International Conference of Asian-Pacific Planning Societies, pp.58-67, 2023.
LINK
低平地における農業用水路ネットワークとそれを支える揚排水施設の実態 -新潟県福島潟周辺を対象として-
シュ ユウジ, 小澤 広直, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.66, 論文番号09-08, 2022.
LINK
新潟県福島潟周辺地域の水路網および集落の変遷と特徴
長澤 歩, 桐原 涼, 小澤 広直, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.66, 論文番号09-07, 2022.
LINK
地域水系基盤としての都市近郊湿地における活動実態と主体の認識 -新潟県福島潟を対象として-
内山 瑛斗, 桐原 涼, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.64, 論文番号34-09, 2021.
LINK
地域の空間計画の一環としての湿地復元事例に学ぶ
シュ ユウジ, 小澤 広直, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.62, 論文番号12-15, 2020.
LINK
子どもが地域の湿地空間に対して持つ認識に関する研究 -新潟県福島潟地域を対象として-
大森 匠悟, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.60, 論文番号17-02, 2019.
LINK
新潟県福島潟における環境整備目的の変遷から見た維持管理・利用活動の構造
渡邉 拓巳, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.60, 論文番号17-01, 2019.
LINK
Information design for understanding the regional environment as a base of disaster awareness
-A case study of booklet design for a wetland environment-
Yoh SASAKI, Hironao KOZAWA, Takumi WATANABE, Kodai YOSHIZAWA|Proceedings of CWMD International Conference, 2019.
LINK
新潟市における潟をめぐる市民活動の特徴
佐々木 葉, 安達 幸輝, 外山 実咲, 橋本 航征, 渡邉 拓巳, 小澤 広直|土木計画学研究・講演集, Vol.57, 論文番号21-04, 2018.
LINK
岐阜県郡上八幡

郡上八幡における水利用施設の管理実態にみられる多様性と主体性について
猪股 誠野, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.55, 論文番号59-08, 2017.
LINK
郡上八幡における水利用施設の維持管理組織の実態把握
猪股 誠野, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.12, pp.216-221, 2016.
LINK
その他

生態系サービスの社会的価値に対する定量的評価手法に関する研究レビュー
韓 煜明, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.68, 論文番号23-14, 2023.
東京都江東区深川地域における河川および沿川市街地の変遷と特徴
緒方 陸人, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.68, 論文番号23-03, 2023.
新聞記事にみる妙正寺川の歴史的変遷
小澤 広直|土木計画学研究・講演集, Vol.68, 論文番号23-01, 2023.
CONCEPTUAL IDEAS OF LAND USE ZONING FOR URBAN FLOODING MITIGATION IN DEVELOPING COUNTRY - PHNOM PENH CITY AS A CASE STUDY
Luong Lim, Yoh Sasaki|土木計画学研究・講演集, Vol.55, 論文番号59-13, 2017.
LINK
農業用水を主とする水システムの管理主体の関係性と地域コミュニティに関する研究 -長野県宮田村を対象として-
石原 卓馬, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.55, 論文番号59-07, 2017.
LINK
ニューヨーク市の飲用水供給のための集水域管理の思想と手法
佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.55, 論文番号59-03, 2017.
LINK
水システムの管理活動からみる管理主体の新たな「きょうどう」の形態に関する研究
石原 卓馬, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.12, pp.222-227, 2016.
LINK
長野県宮田村における水路網とその管理運営の実態に関する研究
石原 卓馬, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.11, pp.27-33, 2015.
LINK

フィールド調査

研究メンバーが関わっている調査対象地、地域水系基盤の観点から興味深い対象地などにおいて、現地調査や意見交換、研究議論を行っています。下記のリンクより、調査レポートをご覧いただけます。

沖縄県 沖縄本島
(2022年11月)

新潟県 福島潟
(2023年2月)

静岡県 源兵衛川
(2023年7月)

熊本県 球磨川
(2023年7月)

新潟県 古太田川
(2023年10月)

新潟県福島潟及び古太田川地域での調査研究活動

早稲田大学景観・デザイン研究室では、2017年度より、新潟県新潟市の代表的な潟の一つである福島潟とその周辺地域を対象に、現代における湿地の価値の再発見とそれらを生かした戦略的な地域デザインの方法を構築・実践していくことを目的として、調査研究活動を実施しています。

2017年度

新潟市潟環境研究所から受託した「新潟市ラムサール条約都市・新潟構想研究委託業務」の一環として福島潟を対象に調査を実施し、福島潟の将来像の提案を行いました。提案内容については、2018年3月に開催された新潟市潟環境研究所シンポジウム「湿地と共生する都市の未来」にて口頭及びポスターでのプレゼンテーションを行いました。

さらにその後、提案内容を福島潟を訪れる多くの人々に広く知ってもらうために、ブックレット「福島潟の風景 -人と自然のつながりの見方-」を作成、配布しました(ブックレット実物をご希望の方は、研究室へお問い合わせください)。

ブックレット(見本)
福島潟の風景
-人と自然のつながりの見方-

ポスター
福島潟の風景のデザイン
人と自然のつながりの見方を拡大する

2018~2022年度

新潟市潟環境研究所からの受託研究の成果を踏まえ、本研究室の自主研究として「市民活動の実態把握」「福島潟地域の複雑な水のネットワークと集落の関係」「福島潟地域の農業用揚排水システムの実態把握」といったテーマを中心に、継続的に実施しました。

2020~2021年度には、「『潟普請』の推進による湿地都市新潟の戦略的地域社会デザインの実践」(研究代表者:佐々木葉、研究分担者:福井恒明)として、(公財)鹿島学術振興財団による研究助成を受けました。これらの研究成果について、ブックレット「福島潟の潟守 -潟と人をつなぐ活動の様々-」を作成、配布しました。

ブックレット(見本)
福島潟の潟守
-潟と人をつなぐ活動の様々-

2023年度~

2023年度からは、福島潟周辺に加えて、福島潟の流入河川の一つと接続している新発田市古太田川の沿川地域にも調査・研究活動を展開しています。

古太田川は、新発田市佐々木地区の下興野・太田新田・飯島新田の3つの集落の中心を流れ、集落に住む人々によって大切に守られてきた河川です。現在でも、カワドなどの水利用施設が残るとともに、川の清掃を行う「江浚い(えざらい)」や年に一度川へ感謝を伝える行事「水神様」など、水との伝統的なかかわりも続けられています。

これまでの早稲田大学景観・デザイン研究室による古太田川での活動について、集落の方々へ向けたニューズレターを発行しています。

古太田川だより0号
(2023年3月)

古太田川だより1号
(2023年7月)

古太田川だより2号
(2023年8月)

古太田川だより3号
(2023年10月)

古太田川だより4号
(2023年11月)

古太田川だより5号
(2024年2月)

古太田川だより6号
(2024年4月)

古太田川だより7号
(2024年7月)

岐阜県郡上八幡での調査研究活動

早稲田大学景観・デザイン研究室では、「水のまち」として先進的なまちづくりを展開してきた岐阜県郡上八幡において、佐々木葉が副理事長を務める、NPO郡上八幡水の学校との連携のもと、水路や水屋などの水利用施設に関する実態調査などを実施しています。

過去の調査結果については、NPO郡上八幡水の学校ウェブサイトにてご覧ください。

その他のフィールドでの実践報告