概要と特徴
研究室のコンセプトを大切にして、各自が心の底から大切だと思う課題に取り組んでいます。
特に縁をいただいたフィールドでは多面的な研究の実践と継続を大切にしています。また継続しているフィールドが大都市よりも地方都市や中山間地域であるのは、そこにはかけがえのない風景がありながらもその存続が危ぶまれており、直接的にその地域に貢献したいと考えるが故です。と同時にそのような地域の課題に取り組むことこそが世界の未来の鍵となると考えるためです。
フィールドを限定せずテーマからアプローチする研究では、目に映る風景を生成させる空間構造や主体の内面から、風景・景観を考えようとしています。それによって都市や空間をつくることのより深い意味に根ざした計画・デザインの実践が可能となると考えるためです。
フィールドに根ざした研究
岐阜県郡上八幡
岐阜県郡上市八幡町(旧:岐阜県郡上郡八幡町、通称:郡上八幡)は、佐々木葉教授の前任校である日本福祉大学において1997年から関わりのある地域です。早稲田大学に本研究室が創設されて以降も、地域のまちづくり活動や水利用施設の実態、伝統的な町並みなどを対象とした調査・研究に取り組んでいます。特に町並みを対象とした調査として、1999年から10年スパンで町並みの悉皆調査に取り組んでいます。
またこのような研究活動以外にも、郡上八幡の水に関する調査や活用に取り組む団体「NPO法人 郡上八幡水の学校」が主催するオープンキャンパスへ参加しているほか、2022年度からはサテライト研究室「saoco lab.」を開設し、地域住民の方々との交流を重ねながら、研究の成果を発信する活動を行っています。
主な関連論文
3時点の連続立面写真から捉える住民による「まち語り」の特徴と意味 太田 恭平, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.19, pp.253-264, 2023. | |
郡上八幡における地域認識としてのサウンドスケープの実態とその構造 秌塲 星澄, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.17, pp.336-340, 2021. | LINK |
郡上八幡における町並みを構成するファサードの特徴と変化 家田 雅之, 佐々木 葉, 秌塲 星澄|景観・デザイン研究講演集, No.17, pp.324-329, 2021. | LINK |
商店街店舗への住民の想起に関する研究 -岐阜県郡上市八幡町を対象として- 土田 栞, 加瀬 未奈, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.15, pp.335-343, 2019. | LINK |
郡上八幡における水利用施設の管理実態にみられる多様性と主体性について 猪股 誠野, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.55, 論文番号59-08, 2017. | LINK |
共同でのものづくりを伴う地域行事の特質と意義に関する研究 -岐阜県郡上市八幡町における春祭りを対象として- 橋本 優華, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.11, pp.263-270, 2015. | LINK |
主体の行為に着目した生活景の記述 -岐阜県郡上八幡を対象として- 古川 日出雄, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.7, pp.166-171, 2011. | LINK |
<関連リンク>
NPO法人郡上八幡水の学校
saoco lab.
長野県宮田村
本研究室では、2014年から「宮田村景観計画」策定に向けた調査・研究活動に取り組んできました。特に地域景観を把握するために、農地や水システムの管理を対象とした研究や、HLC(Historic Landscape Characterisation:歴史的景観キャラクタライゼーション)・Space Syntax 理論などの手法を用いた研究を行ってきています。また宮田中学校や地域住民の方々にご協力頂いてアンケートを実施しており、「好きな場所」や「大切な場所」といった住民の地域認識に関する研究も行っています。
また調査・研究によって明らかとなった価値ある景観資源の認識を目的として、「宮田村の景観を考える会」と協働したまちづくり活動、宮田宿でのイベント「宮田市」への参加といった景観まちづくりの実践活動も行っています。今後は村内の文化財の保存や活用等によるまちづくり活動を実践していきます。
主な関連論文
長野県宮田村における想起された「大切な場所」の特質 伊藤 夏歩, 服部 直樹, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.17, pp.299-306, 2021. | LINK |
「きょうどうの場」となる新たなまちづくりの取り組み -長野県宮田村における宮田市の展開- 細井 友美, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.15, pp.291-298, 2019. | LINK |
街並み構成要素の変化と住民の記憶の関係 -長野県宮田村宮田宿区域を対象として- 増田 大夢, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.14, pp.48-53, 2018. | LINK |
農業用水を主とする水システムの管理主体の関係性と地域コミュニティに関する研究 -長野県宮田村を対象として- 石原 卓馬, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.55, 論文番号59-07, 2017. | LINK |
<関連リンク>
宮田村景観計画
新潟県福島潟
本研究室では、新潟県新潟市の代表的な潟の一つである福島潟とその周辺地域を対象に、現代における湿地の価値の再発見とそれらを生かした戦略的な地域デザインの方法を構築・実践していくことを目的として、調査・研究活動に取り組んでいます。2017年度は新潟市潟環境研究所からの受託研究として実施し、研究成果をシンポジウムにて発表しました。2018年度以降は本研究室の自主研究として関わっています。
調査・研究活動では、福島潟で活動する人々はもちろんのこと、新潟大学名誉教授の大熊孝先生、新潟市内の佐潟をフィールドとする法政大学景観研究室、鳥屋野潟をフィールドとする東京大学景観研究室をはじめ、湿地・流域のデザインに関する豊富な知識を有する学外の研究者・デザイナーの協力を得ながら、福島潟の価値や将来像を考えていくためのブックレットなどを作成しています。
主な関連論文
地域水系基盤のデザインに向けた水利用施設の実態把握-新潟県新発田市古太田川のカワドに着目して- 結城 拓海, 麥 廣之, 塩山 祈, 長澤 歩, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.68, 論文番号23-13, 2023. | |
Designing the Value of Water Infrastructure for Sustainable Regional Inheritance: A Case Study in the Lowland Wetlands of Niigata, Japan Yoh SASAKI|Proceedings of 2023 International Conference of Asian-Pacific Planning Societies, pp.58-67, 2023. | LINK |
低平地における農業用水路ネットワークとそれを支える揚排水施設の実態-新潟県福島潟周辺を対象として- シュ ユウジ, 小澤 広直, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.66, 論文番号09-08, 2022. | LINK |
新潟県福島潟周辺地域の水路網および集落の変遷と特徴 長澤 歩, 桐原 涼, 小澤 広直, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.66, 論文番号09-07, 2022. | LINK |
地域水系基盤としての都市近郊湿地における活動実態と主体の認識-新潟県福島潟を対象として- 内山 瑛斗, 桐原 涼, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.64, 論文番号34-09, 2021. | LINK |
子どもが地域の湿地空間に対して持つ認識に関する研究 -新潟県福島潟地域を対象として- 大森 匠悟, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.60, 論文番号17-02, 2019. | LINK |
新潟県福島潟における環境整備目的の変遷から見た維持管理・利用活動の構造 渡邉 拓巳, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.60, 論文番号17-01, 2019. | LINK |
Information design for understanding the regional environment as a base of disaster awareness -A case study of booklet design for a wetland environment- Yoh SASAKI, Hironao KOZAWA, Takumi WATANABE, Kodai YOSHIZAWA|Proceedings of CWMD International Conference, 2019. | LINK |
新潟市における潟をめぐる市民活動の特徴 佐々木 葉, 安達 幸輝, 外山 実咲, 橋本 航征, 渡邉 拓巳, 小澤 広直|土木計画学研究・講演集, Vol.57, 論文番号21-04, 2018. | LINK |
<関連リンク>
水の公園 ビュー福島潟
新潟市潟環境研究所の記録
長野県開田高原
長野県木曽郡木曽町開田高原(旧:長野県木曽郡開田村)は2019年度から関わりを持つ地域です。開田高原は行政と住民が協働して、50年以上に渡って地域独自の景観施策を多く行ってきた地域であり、合併後の地域景観を支えるために地域独自の景観指針・景観まちづくり提言を新たに作成しています。その過程では、住民を対象としたアンケートの実施や地域の景観を捉え直すワークショップを行っています。
またこのような地域計画の策定において必要となる地域の基本情報を調査するために、地域の景観特性や課題を調査・研究しています。調査は一般社団法人公共経営研究ユニットや地域の議員の方、行政の方々など、地域の方々と連携しながら進めています。
主な関連論文
農村地域における住宅の外観類型と分布の実態調査 -長野県開田高原を対象地として- 有西 希海, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.18, pp.329-334, 2022. | LINK |
<関連リンク>
キソラジ(佐々木葉教授出演回)
岐阜県恵那市
岐阜県恵那市では2008年度より、特に明智・大井・武並・三郷地区の景観計画の策定支援を行いました。その一環として、京都大学、日本大学、岐阜大学、㈱プランニングネットワークとの協同のもとでワークショップを開催しました。また、研究室有志で恵那駅前広場の改修プロジェクトに携わり、適切な機能の配置や人の流れを考慮した計画として提案されたものから模型の制作に取り組み、同時にシェルターの計画も行いました。
主な関連論文
恵那市における景観まちづくりの実践の歩みとそこからの学び 佐々木 葉, 岡田 智秀, 山口 敬太, 出村 嘉史|景観・デザイン研究講演集, No.12, pp.67-74, 2016. | LINK |
歴史的蓄積を有する地方都市における地域景観まちづくりの取り組み -岐阜県恵那市大井町でのまちづくりワークショップを通じて- 松田 恵理子, 佐々木 葉, 安永 祥平|土木計画学研究・講演集, Vol.49, 論文番号154, 2014. | LINK |
風景の多元性に着目した地域認識に関する研究 -鉄道の車窓風景を対象とした写真投影法実験を用いて- 藤澤 奈緒, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, Vol.8, pp.52-58, 2012. | LINK |
地方都市における個別建物更新のメカニズムと景観まちづくり -個々の住民の暮らしの総体的方向性のマネジメントと町並の位置づけ- 佐々木 葉, 井下田 渉|土木計画学研究・講演集, Vol.45, 論文番号65, 2012. | LINK |
地域景観認識の表現媒体としての絵図 -岐阜県恵那市での試みから- 佐々木 葉, 長谷川 智也|景観・デザイン研究講演集, Vol.6, pp.238-244, 2010. | LINK |
<関連リンク>
恵那市景観まちづくりワークショップ
埼玉県本庄市
埼玉県本庄市では、2007年度より市民まちづくり団体「本庄まちNET」との交流が始まり、中山道最大の宿場町であった旧本庄宿周辺のまちづくり活動に参加してきました。特に2008年には電線地中化と今後のまちづくりを考えるワークショップを開催しています。また城下町から宿場町と変遷してきた本庄市と地域で活動する本庄まちNETを対象とした調査・研究活動として、沿道の空間利用や場所に対する認識、市民まちづくり活動に関する研究を行ってきました。
主な関連論文
地方都市における地域まちづくり活動の意義に関する研究 -埼玉県本庄市「本庄まちNET」を対象として- 望月 友貴, 佐々木 葉|景観・デザイン研究講演集, No.18, pp.363-372, 2022. | LINK |
多層化地図を用いた一般的な市街地における場所性の抽出方法 ~埼玉県本庄市における試み~ 添田 信行, 佐々木 葉|土木計画学研究・講演集, Vol.39, 論文番号167, 2009. | LINK |
テーマに根ざした研究
継続的なフィールドでの研究以外のテーマに根ざした研究成果(査読付論文)を紹介します。
景観特性・空間構造分析
駐車場に着目した地方都市の中心市街地のスポンジ化と街路構造の時空間分析 -広島県福山市を対象として- 信野 翔満, 佐々木 葉|都市計画論文集, Vol.58, No.3, pp.547-554, 2023. | LINK |
市街地の「空間的奥行の履歴」に着目した景観特性把握手法に関する研究 土田 栞, 佐々木 葉|土木学会論文集D1(景観・デザイン), Vol.76, No.1, pp.112-122, 2020. | LINK |
街路の形態的特性に基づく媒介中心性と形成年代との関係性に関する研究 髙野 裕作, 佐々木 葉|土木学会論文集D3(土木計画学), Vol.74, No.3, pp.183-192, 2018. | LINK |
REVIEW OF RESEARCH TRENDS IN WATERSHED-BASED LAND USE ANALYSIS Luong LIM, Yoh SASAKI|Journal of JSCE, Volume 4, Issue 1, pp.227-242, 2016. | LINK |
街路パターンの位相幾何学的および形態的指標による地区特性分析に関する基礎的研究 髙野 裕作, 佐々木 葉|都市計画論文集, Vol.46, No.3, pp.661-666, 2011. | LINK |
Space Syntaxを用いた一般市街地における場の景観の特徴把握に関する研究 -東京都世田谷区東部を対象として- 髙野 裕作, 佐々木 葉|都市計画論文集, No.42-3, pp.127-132, 2007. | LINK |
景観評価・地域認識
Characteristics of a Long-Running Citizen-Led Urban Satoyama Conservation Action: A Case Study of “Seki-san’s Forest,” Japan Hiroyuki MAK, Yoh SASAKI|Proceedings of 2023 International Conference of Asian-Pacific Planning Societies, pp.433-448, 2023. | LINK |
石巻南浜津波復興祈念公園における来訪者像の抽出とその利用実態に関する調査分析 結城 拓海, 佐々木 葉|土木学会論文集, Vol.79, No.3, 論文ID: 22-00191, 2023. | LINK |
A STUDY OF HISTORIC QUARTER STREETSCAPES BASED ON TYPOLOGY OF TOURIST-ORIENTED ACTIVITY -A CASE STUDY OF GEORGE TOWN AND HANOI- Yee Sing TEH, Yoh SASAKI|Journal of JSCE, Volume 4, Issue 1, pp.152-165, 2016. | LINK |
風景と場所の同定と都市空間構造との関係性に関する研究 髙野 裕作, 佐々木 葉|景観・デザイン研究論文集, No.7, pp.87-96, 2009. | LINK |
東京都心部の中小河川における名所の変遷と特質に関する研究 伊地知 大輔, 佐々木 葉|景観・デザイン研究論文集, No.3, pp.39-50, 2007. | LINK |
土木デザイン
新機能主義橋梁デザインの評価構造に関する基礎的研究 松井 哲平, 佐々木 葉|土木学会論文集D1(景観・デザイン), Vol.68, No.1, pp.1-12, 2012. | LINK |
土木デザインの時代性と価値 佐々木 葉|土木学会論文集D3(土木計画学), Vol.67, No.5, pp.67_I_1-67_I_14, 2011. | LINK |
歴史的ボーストリングトラスを転用したりんどう橋のデザイン 佐々木 葉, 佐々木 哲也|景観・デザイン研究論文集, No.5, pp.17-26, 2008. | LINK |
土木史
都市計画家 町田保の経歴と仕事 小澤 広直, 佐々木 葉|土木学会論文集D2(土木史), Vol.77, No.1, pp.38-52, 2021. | LINK |
大阪市営電気軌道事業における橋梁デザインの思想と特徴に関する研究 小澤 広直, 佐々木 葉, 松村 博, 黒山 泰弘|土木学会論文集D2(土木史), Vol.76, No.1, pp.131-149, 2020. | LINK |
高度経済成長期に建設された橋梁の系譜とその背景 上田 嘉通, 佐々木 葉|土木史研究論文集, Vol.28, pp.13-23, 2008. | LINK |
歴史的鋼橋の保存の目的と補修・補強技術に関する研究 -東京都内の9橋を事例として- 永田 礼子, 佐々木 葉|土木史研究論文集, Vol.24, pp.129-139, 2005. | LINK |